さて、入門用セットなり、バラで入門用タックルを揃えると心に決めた後、決めなければならない事があります。
それは、タックルの「番手」です。
フライでいう「番手」は、ライン(糸)の重さです。フライフィッシングはラインの重さで軽い毛鉤を投げますので、この重さが重要になってきます。この重さを番号で表します。大きなものほど重く、小さいものほど軽いです。そのラインの重さに合わせてロッド(釣り竿)もリール(糸巻き)も決まります。
・・・なんてことを言われても、何を選んでよいのかさっぱりわからないですよね?(^^;
まぁ、ざっくりとした番手違いを飛距離で表します。(もちろん上級者はもっと投げられることもあります)
#0~#2 | 小物用。一部のマニア用(!?) |
#3~#4 | 距離 10mぐらい |
#5~#6 | 距離 20mぐらい |
#7~#8 | 距離 30mぐらい |
#9以上 | 海などの大物用。 |
飛距離以外で番手の高い低いを説明するとこんな感じ。
番手 | 低い | 高い |
ライン | 軽い | 重い |
ロッド | 柔らかい | 硬い |
フライ | 軽い | 重い |
飛距離 | 短い | 長い |
対象魚 | 小さい | 大きい |
プレゼンテーション(水音がするかで) | 着水時の水音は静か | 着水時の水音は大きい |
投げやすさ | 難しい | 易しい(8番以上は逆に難しくなってくる) |
風の影響 | 大きい(ラインが軽いので) | 小さい(ラインが重いので) |
トラウト用としては#3から#6ぐらいまでを使います
僕の雑感ですが、
#3 | 渓流 ドライフライ専用 |
#4 | 渓流 万能(ドライ・ニンフ・ウェット) |
#5 | 渓流 大物万能(ドライ・ニンフ・ウェット) 本流(ドライ・ニンフ・ウェット) |
#6 | 渓流 大物(ニンフ・ウェット)・本流・湖(ドライ・ニンフ・ウェット) |
って感じだと思います。
すみません、ドライだのニンフだの新しい用語が出てきました。フライの種類・釣り方ことです。後述しますのでここでは
と思っていただければいいです。
#3~#6と書きましたが、ボク的には、入門用には#4か#5をおすすめしたいです。
理由は、
大御所先生の本やお店によっては「渓流なら#3」と#3を薦めてくることがありますが、僕は最初の一本としては否定的です。
理由は、
です。 反論として「本州の渓流魚だと#4以上を使うと竿が曲がらないので楽しめない」とベテランをこじらせたフライフッシャーはよく言います。確かに魚がかかった時に竿がよく曲がるのは低番手ですが、それって「釣る」ことより重要ですかねぇ。僕は魚がかかった後に竿が曲がることよりも、まず魚をかけることの方が大事だと思っていますので、キャスティングし易い#4、#5をおすすめします。もちろん、魚をかけるまでの釣り易さよりも魚がかかった時に竿が曲がることを重要視される方、管理釣り場で60cmクラスの大物がかかった時には潔く諦められる方は、#3を選んでいただいて結構ですよ。ちなみにボクは、魚がかかった後、竿の曲がりよりも魚の引きをダイレクトに感じたいタイプなので、無駄に柔らかいロッドは苦手です。
で、#4と#5、どちらにしたほうがいいかって話になりますが、管理釣り場で練習したら自然渓流に出たいなという本州にお住まいの方は#4。しばらく管理釣り場がメインとなりそうだという人、北海道にお住まいの方は#5が良いかと。まだどっちかわからない場合は#4が良いと思います。
そんなわけで、ボクがとりあえずおすすめする#4と#5のフライフィッシングタックルセットを紹介しておきます。
このへんのセットを買っておけば始められるんで、それでいいんですが、
「なんかセットじゃ、いかにも初心者っぽいし・・・」という方、やっぱり道具の内容を詳しく知っておきたい方のために、ライン、ロッド、リール、の説明を続けますね。
ラインの番手は決まりましたが、他にラインには下記の種類があります。
フローティングとシンキングの違いは文字通り浮くか沈むかです。シンキングは湖など深いところで使いますが、渓流用、そして入門用には間違いなくフローティングです。渓流の水深ならば沈める必要はないし、シンキングラインのキャスティングには「ラインを水面まで持ってくる」というワンクッション入ってしまうので、初心者には向かないのです。ですので、最初は迷いなくフローティングを選んでください。
ちなみにシンキングにはシンクレートという数字があって、数字が大きい方が沈むスピードが早かったりしますが、詳しい説明はここでは割愛します。
テーパー形状は、フライラインの太さがどのように変化するかで、大きく分けてウェイトフォワード(WF)がダブルテーパー(DT)があります。
ウェイトフォワード(WF) | ダブルテーパー(DT) | |
形状 | 太い部分が偏っていて先端側が重たい。 | 両端が細くなっている。左右対称形状。 |
長所 | 先端がより重たいので飛距離が出る。 ライン全体の平均としては細いのでより小さいリールが使える。 |
左右対称なので片側が傷んだらひっくり返して再利用できる。 |
短所 | ダブルテーパーのように再利用できない。 | ウェイトフォワードのほうが飛距離は出しやすい。 ライン全体の平均としては太いので同じ長さなら大きなリールが必要になる |
フライラインメーカーCortlandの画像をそのまま借りちゃいますが、上がウェイトフォワード、下がダブルテーパーです。
両端をひっくり返して再利用できる経済的なダブルテーパーをおすすめしたいところですが、フライラインメーカーさんが売上を気にしているのか最近はダブルテーパーを廃番にしてしまっているケースが多いです。
ちなみに、ボクは最初はダブルテーパーを使用していましたが、「小さくて軽いリールを使いたい」という理由だけで今はウェイトフォワードを使用してます。
ラインの説明の最後に省略表現を書いておきます。
ウェイトフォワードの#4のフローティングライン・・・とか書くのは非常に面倒くさいので、省略表現があります。ウェイトフォワードはWF、ダブルテーパーはDT、フローティングはF、シンキングはSで表して・・・
と言った形で表します。
なので、今後はこの省略形で表記させていただいます。
あと、フライラインってだいたい30mぐらいしか無いので、リールに巻くと巻き量が足りない(余ってしまう)事があります。その場合にバッキングラインと呼ばれる糸を巻いてかさ上げをします。かさ上げ用なので当然太い糸です。また、バッキングラインにはかさ上げの役割の他に、大物がかかって30mのフライラインがすべて持っていかれるしまった時の最後の砦でもあります。 余談ですが「いやー、バッキングラインまで持って行かれてさー」といっている人がいたら、大物が釣れた自慢をしていると思っていいです(^^;;
ラインの番手が決まれば、次は釣り竿、ロッドです。
ロッドは番手以外に、
を選ぶ必要があります。
シングルハンドかダブルハンドかは、入門用の最初の一本ならシングルハンド一択です。
というか、ダブルハンドは湖や本流でロングキャストするためのロッドなので入門用には全く向いていません。
ロッドの長さは、フライロッドの場合、文化的なところからメートルではなくフィート(+インチ)で表します。
これも最初はどんな長さを選んだらいいかわからないかと思いますが、入門用には8フィート~9フィートぐらいのロッドが良いかと思います。
理由は振りやすく飛ばしやすいからです。長いと振り回しにくくなりますし、短いと飛距離が出ません。この8フィート~9フィートがちょうどいいのです。ええ、だからロッドもこのあたりのラインナップが多いです。
ロッドの材質は大きく3種類あります。
まぁ上記解説を読めばわかるように、入門用にはカーボンロッド一択です(笑)
アクションは、ファースト~スローという表現で表します。ファーストが硬い、スローが柔らかいと思えば大体あってます。ファーストとスローの中間がミディアムです。
ロッドの種類によって千差万別のアクションがあるので、こればっかりはそれぞれの好みで選ぶしかないです・・・と言われても、初心者にはさっぱりですよね(滝汗)
ズバッと言っちゃけば、初心者はとりあえずラインを乗せやすいミディアム~ファーストアクションがおすすめだと思います。
そんなわけで、今までのをまとめると、
となります。
……が、これだけ決めても、売っているロッドは無数にありますねぇ
というわけで、初心者のボクがおすすめする初心者用のロッドを上げておきます。
ラインが決まったので、次はそのラインを入れるリールです。
フライフィッシングでは他の釣りの釣り糸とは違う太いフライラインを使うので、他の釣りで使うリールでは代用不可能でフライ用のリールが必要になります。また、フライフィッシングでは基本的にリールは使わない部分の糸を巻いておくだけ道具で、その操作は直接手で行います。リールを操作するのは、余分な糸を巻き取る時と、かけた大物が走って出していた分の糸を全部持って行ってしまった時だけです。
というわけで、フライフィッシングにおいてはリールは所詮ただの糸巻きなんですが、それでも沢山の種類のフライリールがあります。
まず、フライリールは大別してクリックドラグとディスクドラグに分けられます。リールから手で勢い良くラインを引っ張りだした時に、何のブレーキもないと慣性で糸巻きが回り続けてラインがグチャグチャになるバックラッシュを起こします。それを防ぐのがドラッグです。ディスクドラグは更にそのブレーキ力(ドラグ力)を調整できて、大物がかかってラインが持って行かれた時に「魚を疲れさせるぐらいしかラインは出さないけどラインが切れないぐらいのブレーキ」に調整することができます。クリックドラグでもある程度は調整できるけどドラグ力は弱くて、大物がかかった時には手動で糸巻きを抑えたりしてブレーキを掛けることになります。その代わりクリックドラグは機構も単純で壊れにくく軽く作れます。
僕は、ヤマメイワナの渓流釣りをする場合には軽さをとってクリックドラッグのリールを使うことが多いです。逆に、北海道でニジマス・アメマスなどのパワフルな魚を相手にするとき、また大海原で走るシーバスなんかを相手にするにはディスクドラグのリールしか使いません。
クリックドラグ | |
メリット | ディスクドラグより軽い 機構が単純で壊れにくく丈夫 安い・・・いや、高いのもありますけどね(^^;; |
デメリット | 大物がかかった時にドラグに頼れない。 |
ディスクドラグ | |
メリット | 大物がかかった時にドラグに頼れる。 |
デメリット | クリックドラッグより重い 構造が複雑でクリックドラグよりは壊れやすい 高い・・・いや、安いものもありますけどね(^^;; |
次に、リールの大きさですが使用するフライラインがすべて収まることが基準になります。大体カタログにラインキャパシティの項目があって「DT4+45」とか「WF5+60」表記があります。「DT4+45」ならばDT4のフライラインと45ヤードのバッキングラインが入るという意味。ただ、これをそのままだと「キッチキチに巻いてパンパン」になるので、表記から10ヤードぐらいバッキングラインを減らすぐらいがちょうどいいと思います。
ドラグの種類とラインキャパシティ2つを考慮して選んでいただければ良いかなぁと思います。・・・が、そんなことを言われても、沢山の種類のリールから選ぶのは大変かなと思います。そこで、安くて使える初心者向けリールをクリックドラグとディスクドラグの2種類あげておきます。
長所 | 安ゥゥゥゥゥいッ説明不要!! めちゃめちゃ丈夫。値段の割に質感が良い(個人的な感想) |
短所 | クリック音がかなりデカイ(大物が釣れたことをまわりに主張したいなら長所(笑) 高級品に比べると重い。 こじらせ系ベテランにバカにされがち。(バカにするベテランがバカだと思えばOKなんですけどね) |
長所 | 安ゥゥゥゥゥいッ説明不要!! それなりに丈夫。転がしても気にならない価格。 |
短所 | 高級品に比べるとドラグの滑り出しが滑らかではない(「比べると」なので、まぁ問題にはならないレベル) 高級品に比べると若干重い(10グラムとかそこらね) こじらせ系ベテランにバカにされがち。(バカにするベテランが・・・) |
次はいよいよフライフィッシングの本質、フライ(毛ばり)について紹介します。
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